大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)3803号 判決

公訴事実とは犯罪構成要件該当性を有する事実を包含する社会的事実であつて訴因の基礎となる事実関係であり、訴因は右基礎的事実関係が法律的に構成せられたものである。起訴状に記載すべきいわゆる罪名は、基礎たる事実関係が法律的に構成され、訴因として形成されたときのその犯罪類型の呼称である。

而して一定の公訴事実はその法律的構成の如何によつて、或は数個の訴因に形成され、或は別個の訴因に変更され得るのであるから、一定の公訴事実が一定の罪者に制約され罪名を変更することは公訴事実の同一性を喪失するという所論は誤である。

本件起訴状記載の訴因は、所論のとおり被告人が昭和二十四年九月二十一日及び同月二十五日の二回に亘り橫浜港第三区に碇泊中のL・S・T・Q零第十二号の機関員中川好雄より、同人が窃取したものであることを知りながら軽油合計五噸を代金十万五千円で買い受けて賍物の故買をしたという事実であり、変更後の訴因は、昭和二十四年九月二十一日及び同月二十五日の二回にいずれも橫浜港内第三区において、連合国占領軍の財産たる軽油合計五噸を不法に所持していたという事実であるがこの両者の訴因において異るところは、前者は被告人が右軽油が賍物たることを認識していたというに対し、後者は右軽油が連合国占領軍の財産たることを被告人が認識していたという点のみであつて、この主観的要件を除く客観的な基礎事実は全く同一であるから、たとえ前者の訴因を後者に変更しても、その基本たる公訴事実の同一性には何等変更ないものといわなければならない。されば原審が右の訴因変更を許し、後の訴因を審判の対象としたことは毫も法令に違反するものではないから論旨は理由ないものである。

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